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広島地方裁判所 昭和37年(レ)43号 判決 1967年11月27日

主文

一、一審原告らの控訴により原判決を次のとおり変更する。

(一)  一審被告は、一審原告晃子に対し別紙目録記載(一)の土地上にある同目録記載(二)の建物を収去して右土地を明け渡せ。

(二)  一審被告の一審原告らに対する反訴請求は、いずれも棄却する。

二、一審被告の控訴を棄却する。

三、訴訟費用は、第一、二審をつうじすべて一審被告の負担とする。

四、この判決中一の(一)の部分につき、一審原告晃子において金一五万円の担保を供するときは、仮に執行することができる。

事実

(双方の申立て)

一、一審原告ら訴訟代理人は、

「一審被告(反訴原告)の反訴請求(一部)棄却の部分を除き、原判決を取り消す。主文一、三と同旨。」の判決並びに仮執行の宣言を求め、一審被告の控訴につき主文二と同旨の判決、

を求めた。

二、一審被告訴訟代理人は、

「一審被告勝訴の部分を除き、原判決を取り消す。一審原告らは、一審被告に対し金五九万五、〇七八円を支払え。訴訟費用は、第一、二審とも一審原告らの負担とする。」との判決を求め、一審原告らの控訴につき「本件控訴を棄却する。」との判決を求めた。

(双方の事実上の陳述)

当事者双方の主張、認否は、次に記載するほかは、原判決の事実摘示と同一であるからここにこれを引用する。

一審原告ら訴訟代理人において

一、壇上坂次郎(一審原告、反訴被告)は、昭和三七年一〇月二五日死亡し、一審原告晃子において遺贈により別紙目録(一)記載の土地の所有権を取得したので、本訴請求につき同原告において訴訟継承し、右坂次郎の一財産については養子である晃子、文雄の両名が共同相続したので、一審被告の損害賠償を求める反訴請求部分については、一審原告両名が訴訟継承した。

二、坂次郎は、一審被告から訴外小林一之をつうじて本件土地賃借の申出がなされたのに対し、拒絶した事実がある。それは坂次郎において小林一之が土地所有者たる坂次郎に無断で地上建物の賃借権を譲渡し、多額の権利金を取得したり、地代を供託する等のことから右小林を全く人格的に信用していなかつたからである。本件土地については、小林一之が昭和二九年六月頃訴外松岡竹市に対し地上建物(別紙目録(二))を売却した為め、坂次郎と右松岡の間に土地賃貸借契約が締結され、松岡はその後本件土地の賃料を支払つてきたものであり、同人は坂次郎に対し昭和三三年八月三〇日返地証書を差し入れ、右土地を返還した。

そこで坂次郎は、訴外宮本薫に対し本件建物は朽廃状態にあるため、これが収去できるものと信じ同年九月一日賃料月額坪当り金一五円として右土地を賃貸し、同年一〇月一五日土地賃借権設定の登記をした。したがつて小林一之に賃借権はなく、一審被告の申出を坂次郎が承諾するいわれはない。

三、坂次郎は、一審被告が小林一之から本件建物の所有権取得登記をえたことを知り、同年一〇月二一日付内容証明郵便により一ケ月以内に右建物を収去するよう催告した。

四、坂次郎が小林一之に対し宅地賃借証書用紙(甲第一三号証)を手交したのは、小林が先代名義になつていた土地賃借契約書の書替えをするというのでその求めにより貸与したに過ぎず、一審被告主張の賃借権とは無関係のものである。

五、仮に、一審被告主張の賃借権が容認されるとしても当審弁論終結当時地上建物は朽廃しているので右賃借権は建物朽廃により消滅したものというべきである。

と述べた。

一審被告訴訟代理人において

一、檀上坂次郎が一審原告ら主張のとおり死亡し、一審原告らがそれぞれ遺贈による所有権取得並びに共同相続をした事実はいずれも認める。

二、昭和三三年九月三日頃一審被告は、父矢野久吉と共に坂次郎の自宅を訪問し、本件土地賃借の申出をし、心よく貸してくれる気配なので、帰宅後、小林一之と本件建物(別紙目録(二))の売買契約をして手附金一五万円を支払い、同月五日再び父久吉と共に坂次郎方を訪問し、同所で賃料は近隣なみ(一ケ月坪当り金八円)で毎年六月末、一二月末の二回に支払うことで期間の定めなく賃借する約束が成立した。そこで、一審被告は右九月五日の賃借権の成立を主張し、訴外小林一之の有した賃借権譲受けの原審における主張は撤回する。

と述べた。

(証拠関係)(省略)

目録

(一) 広島県福山市(松永)今津町字宮下一〇番地の三二

一、宅地  一六坪九号六勺

(二) 同所

家屋番号今津町第五八番

一、木造瓦葺平家建居宅  一棟

建坪  七坪五合

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